| 中国建材事情 その4
四川大学対外経済貿易学部教授
四川大学経済学院日本研究センター主任
姚 順先
中国製木質建材(2)
私が日本語を大学で勉強していた時に奇妙な現象を見つけた。それは、日本語における魚の名前と人の内臓の名前に関してのものである。魚の名前については、鯉(こい)、鮒(ふな)、鮪(まぐろ)、鯛(たい)、鱒(ます)、鮎(あゆ)といずれも訓読みになっていて、つまり漢字が日本へ伝わる前に、すでに日本人は自然を丁寧に観察して、これらの言葉を持っていたのである。それに対して、人の内臓については、胃(イ)、心臓(シンゾウ)、肺(ハイ)、肝臓(カンゾウ)、腸(チョウ)などいずれも音読みになっていて、つまり中国から伝わっていった言葉である。「こころ」という言葉があって、「心」と書くが、それは、ものを考えて感情をつかさどるものであって、心臓そのものではないのである。昔の日本人は、身の回りの自然にばかり気を取られて、自分の内についてはよくわからなかったと言ったら、おかしな結論かもしれないが、どういうわけだろう。
この度中国の木質建材についての調査勉強を始めてみると、大昔の日本人の自然に対する鋭い観察力を今更のように感心したのである。言うならば、エンジュ(槐)、ナラ(楢)、タモ、サクラ(櫻)、ヤナギ(柳)、カシワ、ブナ、クスノキ(楠、樟)、ケヤキ(欅)、スギ(椙、杉)、カラマツ(唐松)、マツ(松)、マユミ(檀)など、どれを取っても日本語読みになっているのである。久しぶりに大学の勉強時代に戻った気持ちで、言葉の難しさも手伝って、かえって良い勉強になった。
中国では去年木材の輸入量は1000万立方メートルを突破し、世界一の木材輸入国となった。パルプ、建築、合板、内装など様々な分野に使われたけれども、内装業に使われた材木の量は218万立方メートルであり、輸入金額では5.13億ドルになり、他の追随を許さぬトップになっているのである。しかも、他の業界の不振に対して、強い伸び率を示している。家庭内装は輸入木材消化の重要市場なのである。
これまでに見たことも聞いたこともない世界各地の木材が市場へ出まわるようになった。各メーカーも我先に格好良い商品名を売り物に、輸入材木の販売を競い合っている。例えば、アメリカの黒いサクラ、ドイツの楢、アフリカのサクラ、東南アジアの花紋様の梨の木などである。中国国内市場の繁栄ぶりに反比例して、材質を日本語で紹介することがますます難しくなってきているほどである。
その言葉上の難しさをカバーするために、今回はできるだけ絵を沢山使って、皆さんの専門家の目によるご判断に任せたいと思う。
カテゴリー別に見ていくと、何と言っても、床材の主力の座は揺さ振りを許さないのである。本物嗜好、木の温もりが皆の追い求める流行になり、また内装が生活を快適にするだけでなく、現代的で優雅な生活のステータスでもあるという幾多の考え方が、相乗効果を表しながら、次第に人々の脳裏に焼き付いていった。商品名が派手で、本物感に溢れ、品位と威厳があり、高度な技術や技能を感じさせ、しかも人の自尊心を十二分に満足させることができそうな床材が次々と世を伺うようになった。前回紹介した三つの工場の主力商品はいずれも床材である。その中、麦と稲の藁(わら)で中密度繊維合板を造る国棟建設社が、5月から中央テレビで強化床材の広告攻勢をかけて、工場の生産も本格的操業を開始した。その中国現在の中密度繊維合板需要の三分の一の生産量を、全中国の市場を視野に売りさばきを始めたのである。
それと同時に、クリップアップの方法やノイズ消去タイプ、防菌タイプ、床暖房タイプなど新機能を備え持つ付加価値の高い新商品も雨後の竹の子のごとくたくさん現れているのである。
内装に欠かせないものとして、ドアとドア枠がある。玄関ドアはほとんど鉄で造られた防犯ドアになっているが、室内のドアは個人の好みで実にバラエティーである。アルミ、樹脂製のものもあるが、木材のドアが一番よく使われている。洋の東西を問わず、木でドアを造るというのが本来のあり方であろう。洋式と言っても北欧、アメリカ、イギリス、イタリヤ風があり、売り込み作戦の為の商品名かもしれないが、それらしい感じが全く無いわけでもない。商品種類の多さにまず感服せざるを得ない。日本の襖(ふすま)のような物が、今中国で大流行、本当の和紙も一部あるが、大半は木の柵の真中に有機ガラスを挟み、和紙らしい雰囲気を醸し出しているのである。
中国伝統の柵の細かいドアも流行っている。これまで生活難で中国文化をゆっくりかみ締められなかったインテリの人々の間で、その反動で、中国文化塾が起こっている。成都市の近郊では、純中国風の別荘団地も出来て、大好評になっている。建材市場へ行くと、古く似せて造った古風な窓やドアが展示販売されている。
二、三階建ての別荘や室内に階段が必要になる二階建てマンションが益々多くなるにつれて、階段や手摺りの需要が多くなってきている。手摺りの方はどちらかというとアイアン鋳物飾りの方が多いが、階段そのものはやはり木が主流である。一部特別加工された室外専用のものも密かに人気を呼んでいる。
木の彫刻や竹の工芸品や装飾用の木質商品が速いテンポで進歩していて、人々の生活をより文化的、より優雅に飾ってくれるということであろう。健康で環境にやさしいということで、木の風呂桶、木の天井はさておき、アルミサッシも調和を求めて木の年輪紋様に仕上げているのである。
今「科技木」と呼ばれる商品が話題を呼び、急速に普及している。セールスマンと話し合って分かったのだが、黒い色の木材の薄くむいた単板を何十枚、何百枚と接着剤で貼り合せ、木材として使用するものであるという。コンピューターを駆使して、木の年輪までも設計してあるので、「科技木」つまり科学技術の木と言う、なるほど納得がいく。手摺りや彫刻にすると、きれいな年輪紋様が現われ、いかにも本物らしく見える。新しがり屋の中国人が惹かれるのも無理なく、よく分かるような気がする。
中国の建材市場は原則として、メーカーや問屋それに代理会社が建材市場から部屋を借りて営業するのが一般的なやり方である。それで同じ床材を扱っている売り場が十何社も軒並み続いているのである。消費者は一軒一軒訪ねて、品質を確かめ、価格情報を集めて、最終的に決断する。
「貨は三家比べる」という言葉があるように、必ず三社以上見比べるというのが中国人の買物の習慣である。
近頃、世界500強企業に数えられ、ヨーロッパ第二のドイツのオベット社が成都市に上陸し、建材チェーン店の展開を始めた。つまり統一標識のもとで仕入れ、結算、管理等のロスをできるだけなくし、在来の建材市場に対抗し、経営規模で小口の内装消費に、より低い価格で良いサービスを提供しようとするものである。建材市場の経営者の皆さんに感想を聞いたところ、在来の店舗方式はメーカーの窓口として大口の消費者に向くことは明らかであり、建材チェーン店は安い値段で売り、小口の消費者にスーパー並みのサービスができるからメリットがある、長い間2タイプの建材市場が仲良く並存することだろうと言う。
いずれにしても透明な価格システム、きめ細かなサービスときちんとした品質保証が最終的に勝つと私は思う。消費者の選んだ方が生き残れるであろう。
今年中国全体の木材の需要が8000万立方メートルと見込まれているという。パルプは再生紙の影響を受けて伸び悩み、建設は代替材料で強く伸びるのは、依然として経済発展に裏付けられ、市民の強い情熱に支えられる内装用木材であろう。
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